2020-12-06 自然は綺麗だ 村保育の可能性 壮大な景色、光と陰のコントラスト、素朴な色彩や形 自然の景色は多くの人を感動させますよね。 癒し効果はさることながら、集中力を高める効果や、視力をあげる効果などなど 自然は綺麗なだけでなく、美味しい食べ物だけでもなく人生を豊かにしてくれる様々な要素があります。 社会人や青年期の子どもへの影響も研究されている中で、乳幼児を対象とした研究はまだ少ないのが現状ですが、先の研究を見てみると綺麗な景色を見ることがいかに人にとって有益かがわかります。 https://wired.jp/2010/08/25/「自然な景観」が人に与える影響/ また「感動」という状態が人に及ぼす影響なども幅広く研究されており 心を動かす体験や経験は人に大きな影響を及ぼすことも分かってきています。 感動体験に伴う感情が中学生の人間的成長に与える効果の検討 -自立,協同,創造の観点から- https://core.ac.uk/download/pdf/236639195.pdf 自然環境の中で行う子育ては子どもにとってどんな影響があるのか。 自然の「景色」や「景観」を見ることの効果を 「共同注視」というテーマで今回はお伝えしようと思います。 共同注視とは 相手が見ているものを見る行為のことです。 生後9ヶ月の赤ちゃんは相手の視線を追う「視線追従」という行為をするようになります。 そして12ヶ月ごろになると相手の視線を見て「何を見ているのか」わかるようになってきます。 街中を子どもと母親が歩いているときに前から犬が歩いてくると「あ!わんわん!」と大人が子どもに犬を見せようとします。 救急車を見つけたり、飛行機を見つけたり、 発見したものを相手に見せあい、一緒に見るようになるのです。 この行為は「共感」の元とも言われています。 綺麗な景色を見たときに人は思わずその景色をだれかに見せたくなります。 野生の鹿たちは、一頭の鹿が一つの方向を見ていると周りの鹿も危険をいち早く察知するために同じ方向を見始めます。 この共同注視をする能力は視界からの情報を頼りに群れで生きる哺乳類にとって大変重要なものなのです。 現代においてtwitterやfacebookのようなsnsが発達しているのもこの「共同注視」や「共感」というものが人が生きていく上で大きな影響を及ぼすことを人間たちのDNAに深く刻まれているからなのかもしれません。 赤ちゃんの時に、身近な存在と目を合わせて心を通わせて愛着関係を結び その関係のある人と同じものを見て、一緒に感じることはとても大切な子育ての行為です。 集落の保育環境で2歳のT君は「はっぱ!はっぱ!」と自分の知っている葉っぱを見つけると 近くの大人に見せようとします。 それはT君の周りの大人たちが銀杏や紅葉の葉などや大きな枯葉をT君に「綺麗な葉っぱがあったよ!」と見せているからです。 そのほかにも、白鷺やカエルやカマキリなどを見つけた時も大人はT君に「見て!」と共同注視を促すのです。 都会の環境と自然のある環境で大きく差があるのがこの共同注視を促すバリエーションの数にあります。それは環境の変化する度合いも大きく影響しています。 秋になって山の落葉樹が一斉に葉っぱを落とす光景は大人も子どもも思わず見てしまいます。 そしてその時感じた気持ちを共有するのです。「すごいね!」と そして幼児期になり、感動する心が育ってきた時には 様々な感動を自然は人に与えます。 冬から春へ季節が暖かくなってくると見られる「新緑」は何度見ても人の心に「綺麗だなぁ」と思わせます。 私の保育のバイブルでもある。レイチェル・カーソン レイチェル・カーソンは著書『沈黙の春』で、身近な自然と多く関わった子どもは「センス・オブ・ワンダー(自然の持つ神秘さや不思議さに目を見はる感性)」が育まれていくと書きました。 そして「知ることは感じることの半分も大切ではない」と述べています。 日本がなぜ地球の中で先進国の一つになれたのかという問いの私の仮説は 日本の自然の豊かな「四季」とその環境によって日本人の情緒がとても豊かに育ったからではないかと考えています。短歌や俳句、日本建築、生活の様式美、これらを育んだの日本の四季です。 自然公園などに行って触れる自然と里山の暮らしの中で感じる自然には大きな差があります。 自然体験を子どもにさせたがる人がいますが、させられる体験から何かを学ぶことはほとんどありません。 日本の自然の持つ力を子育てに活かす術を保育士としてもっともっと高めていった時、 その保育は 現代においても世界に通用する保育になるのではないかと思います。